【グレース】 著者:源孝志 出版社:文芸社

赤い表紙の彩りと、女優の杏ちゃんが帯に載っていたのが気になり手に取った。

読み終わった後、表紙の赤色がなんなのか分った。素敵な装丁だ。


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グレース

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事故で亡くなったはずの妻が遺言を残していた。
車の免許すら持っていない夫に託されたのは、妻の愛車“グレース”。
妻が何を思って車を残したのか。それを知るために、夫は免許を取ってグレースに乗り込んだ。
そこでみつけた、ナビに残された不可解な目的地履歴。

妻はフランスで亡くなった。ツアーバスが事故にあったのだ。
しかし、フランスに旅立つ前に、どうやら日本を巡っていたようなのだ。
なぜ、夫には「フランスに行く」としか言っていなかったのか。
なぜ、日本を巡ることを秘密にする必要があったのか。
夫は、グレースに残った目的地履歴を辿る旅に出た。

夫:喜久夫
妻:美奈子

この二人の視点を中心とし、各地で出会う人々の視点を加え、さらに、過去と未来の話が交差する。

美奈子が喜久夫に秘密にしていることは、すぐに分かる。
美奈子の視点から話が始まるからだ。

喜久夫を、ただただ愛していた美奈子の行動。
美奈子の行動を疑ういながらも、辿る喜久夫。

すれ違っていた夫婦が、妻の死後、たくさんの人に出会い壮大な愛に気づく――そんな話だと思って読んでいた。

が、喜久夫の旅の途中、予想外な展開へ。

美奈子にとっては予想外できなかったであろう、そして、喜久夫にとっては幸運の、そんな出会いがあった。

美奈子の愛車“グレース”が、なぜ“グレース”なのかを知る人物と巡り合うからだ。

“グレース”とは、美奈子が車に付けた愛称だった。
本当の車の名前は、“ホンダ S800”という。
このS800――通称エスハチを作った人物に出会い、喜久夫はなぜ美奈子がエスハチに“グレース”という名前を付けたのかを知る。

この、エスハチのエピソード。ここに、とにかくロマンがある。
この部分だけ読むと、まったく恋愛小説なんかじゃない。
車を作った技術者の話である。
車に全く興味のない私でも面白く読めた。

なぜ、夫婦の絆の話にそんな車の話が突っ込まれているのか。
それは、美奈子がフランスに飛び立った理由に繋がる。
正確にはフランスではなく、モナコなのだけど。

美奈子は、無念だったと思う。
死になくなかったと思う。
生きたかったと思う。
それが、ひしひしと伝わってくる。
それなのに、せっかく美奈子が生前に計画したことは、きっと失敗に終わる。
美奈子が用意した結末にはならないと思う。

でも、美奈子が計画した以上のことが、喜久夫の元に残ったはずだ。
喜久夫は、美奈子のしたかったこと、思ったことを、ひとつ残らず理解したと思う。
美奈子の行動と、グレースという車の“縁”で繋がった人たちのおかげで。

喜久夫が考えた供養の方法は、きっと美奈子に喜んでもらえると思う。

結末のその後を想像できる、想像して楽しい。そんな作品に出会えた。
きっと、読み終わった全員が、同じ続きを想像すると思う。

“縁”というものはこういうものだろう。
世界は、広いようで狭いのだ。

 
【感想蛇足】
喜久夫の後妻になりそうな人物が2人出てくる。
草織と晴香だ。
本編ではそこまで描かれてない。
が、個人的には晴香の方が好き。晴香とどうにかなってほしい。
そして、草織の読み方が分からない(笑)
サオリ……かな?

【感想蛇足 その2】
途中、誤字(誤植?)がある。
たぶん、美奈子と草織を間違えてる。
ちょっと冷めた。
これを出版社に指摘したとして、回収になったりする? 1ヶ所くらい気にされない?
重版されるんだったらその時に修正してもらえればそれでいいんだけど、重版されそうにないので、回収されたらもう世に出回らないような気がする。

すっごく大好きな作品になったので、そうなったらすごく残念。
なので、細かい場所は指摘しないまま、スルーしておくことにする。

 


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